白黒先生-二重人格彼氏-
「そういうトコだよ、分かってねーな…いっつもそんな顔してっと、いつキスされても何も言えねーぞ」
「キッ…!?」
脳内に、三度にもわたる悪夢が蘇った。
あたしは慌てて先生の手を払いのけ、先生から遠ざかる。
「失礼な奴だな…するかバカ」
「だっだっ、だって…」
露骨に不機嫌そうな顔をする先生に、あたしは口をパクパクさせたままちゃんと返事できなかった。
実際アンタはあたしにキスしたでしょうが!!
3・回・も!!
忘れようと思っていた出来事なのに、思い出しちゃったじゃないかコノヤロー。
「ったく…」
先生はめんどくさそうにもたれていた壁から体を離すと、汚れたスーツを手で払った。
「んじゃ俺行くわ」
「はい! どこへでも行ってくださいっ」
「お前なぁ…」
「はいっ嘘ですすいません!! さようなら、先生」
あたしは優等生気どりで頭を下げた。
顔を上げると、先生があたしを睨んでいる。