白黒先生-二重人格彼氏-
瑛の拳に力が入るのが分かった。
嫌な予感が、頭をよぎる。
「瑛っ」
とっさに名前を呼ぶと、瑛ははっと我に返った。
どうしたの、瑛…。
いっつも、こんなにケンカっ早くないのに…。
先生は顔色ひとつ変えずに、壁にもたれて立っている。
「瑛…どうしたの、おかしいよ最近…何か嫌なことでもあった…」
「…誰がこうさせてると思ってんだよ」
あたしの言葉は最後まで紡がれなかった。
瑛は少し悲しそうな顔をした。
瑛の、言葉が、分からない。
あたしには知らせたくないみたいに、瑛は言う。
「…じゃな」
瑛は地面に落としていたバッグを乱暴に拾うと、教室から出て行った。
「瑛っ!?」
教室のドアに向かって瑛を呼んだって、返事のひとつも帰ってこなかった。