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わからない。
なにがわからないって、この問題がですよ。
机上に広がる、国語の補習プリント数枚。
私は授業中呆けていた罰として、補習プリントを今日中に提出しなくてはならない。
今日中に提出出来ればこれ以上のお咎めはなし。
しかし、今日中に提出出来なければ、明日また何枚かプラスされた補習プリントを解いて提出しなければいけない。
「うーん…」
「…」
そんな絶賛にピンチな状況。
しかし、そこまで得意ではない古文を一人で解くとなるとかなりの高確率で提出できないので、当然のように助っ人を準備してある。
あるんだけど、
「って、どうしてさっきから助けてくれないのっ!?」
千佳君は前に座ってただ黙って見ているだけだった。
助っ人の意味がないじゃんっ!
「…ここ、間違えてる」
「え、うそっ!?」
指を差して間違いを指摘してくれた千佳君。
だけど、指摘しただけで後はもう放置。
やっぱりここは解き方を自分から聞いて、教えてもらうしかない。
「ねぇ、ちか――」
「お前、由貴の何処がいいの」
意を決して聞こうと声をあげれば、それを遮って千佳君が質問を私にぶつけてきた。
しかし、その質問は私にとっては恥ずかしいもので、赤面してしまった。
―ど、どこって…。
「えっと…そ、の…」
「…」
無言で答えを待っている千佳君。
どくどくと、脈が波を打っている。
「あの…」
「――不破、さん」
声が重なる。
振り向けば、其処にいたのは杏奈さんだった。
「話があるの。ちょっと来て」
「え、でも…っ」
「いいから」
腕を引っ張られる。
予想以上の力の強さに驚く。
「松里が、やっておいてよ」
有無を言わせない声に、不安が沸き上がった。