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empty days
「じゃあ、P34の問36」
低音の美声が教室に響く。
女子の皆は惚けており、その教壇に立つ人物、大月先生を見つめている。
しかし、先生が手を叩くと皆一斉に問題へと取り掛かる。
…今更、だけど、私のクラスの授業持ってたんだよね。
今まで全く気が付かなかった。
大抵の授業は窓の外を眺めていて、先生の話を聞いたりはしていなかったのだが、窓に視線を送る前に、大月先生が目に留まった。
びっくりだ。
しかも、留まったと思ったら、しっかりと、がっちりと目が合った。
「…。…はぁ」
誰にも聞かれないようにこっそりと溜息をつく。
あの日から何日か過ぎた。
日数なんて、数えたくなくて、あまり携帯もカレンダーにも目をくれないようにしている。
おかげで携帯の電源はほとんど切っている。
それに気付いた千佳君と紀紗は、何時頃にメールするから、と帰り際にわざわざ教えてくれる。
「…。」
もう、終わったことだ。
忘れて、これからを考えなくては。
そうは思っても、自分から別れを切り出したくせに未練たらたらな自分が嫌になる。
「じゃあ、(1)を不破。(2)を松里」
「え、私?」
「俺等以外にいねぇだろ。行くぞ」
間抜けな私の疑問に答えて、腕を優しく掴んで一緒に立たせてくれる千佳君。
少々乱暴な口調と合わない優しい仕草に嬉しくなった。