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最近は、忙しい。

七夕祭が2日前のため、今日は授業なしで、全部が準備に費やされる。

私のクラスの催し物の準備は滞りなく進んでいる。


「七夕祭って、浴衣なんだよねー」

「楽しみー」


廊下を歩いていると聞こえてくる会話。

主催側であるこの学校に所属している人達は浴衣がその日の制服だ。


「浴衣、ねぇ」

「っ!?」


ぼそっと呟かれた言葉にびっくりする。

言葉、と言うよりは突然聞こえた声に、だ。


「ち、千佳君…っ!」

「なに?」


びっくりさせないでほしい。

そう言おうとしたけれど、彼に悪気は無いようなので何も言えなかった。


「いや、なんでもない。私が勝手に驚いただけだから」


勝手に驚いて、勝手に怒るなんて駄目だよね。

うんうんと、一人で自己完結させる。

すると、千佳君がまたぼそっといらない爆弾発言を落としてくれた。


「わざとだし」

「!?」


ばっと、千佳君を見る。

口の両端を持ち上げて弧を描く千佳君が意地悪く笑った。


「な、…あ、悪魔っ!」

「そりゃどーも」

「褒めてないよっ!」


突っかかればくすくすと笑われて、なんだか恥ずかしくなる。

どうしてこう、この人は意地悪に出来ているんだろう。

不思議で堪らない。


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