like or love
「今何時?」
「え、10時半」
昇降口で、靴を履き替えていると唐突に時間を聞かれ、急いで靴を履き、鞄に提げている時計を見る。
今更だが、学校に着いてから全然時間が経っていなかった。
「じゃあ、どっか寄って行こうぜ」
どうせヒマだろ?そう続けられ、ピシッと固まる。
思わず綻んだ口元が、引きつった。
どうせって、なにさ。
いや、どうせヒマですけどね。
言い返す余地もない千佳君の台詞に恨めしくなって、じっと睨む。
「ははっ、いいじゃんべつに。行こう」
久々に見た、千佳君が声をあげて笑う姿。
日が暑く差す中笑う千佳君の髪が反射して、薄茶の髪が淡く光る。
「~~~~っ、い、行こっ!」
頬に熱が集まるのを感じて、急いで千佳君よりも先に行く。
顔を見られたくなくて、少しだけ小走りしたのがいけなかったのか、何もないところで躓いた。
「ゎわっ」
―ぶつかるっ!
反射的に手を顔の前に出して、目を瞑る。
次に来る痛みを予想して構えたが、次に来たのは腕を引っ張る力と、人の体温らしき温もり。
「…お前、馬鹿だな」
「なっ!?」
溜息をわざとらしく大きく吐かれる。
確かに私が悪いけど、それはないんじゃないかと反抗したくなる。
「ばーか」
へっと鼻で笑われ、怒りが込み上げてくる。
なんだ、この人。
失礼にもほどがあるっ!!
「あのねー」
「はい」
「へ?」
罵ろうとした矢先に手を差し出される。
しかし、差し出された手の意図が理解できずどうすることも出来ない。
…この手は一体?