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足掻いて


放課後。

いつもよりも強い視線を感じ、それが隣でないことに肩の力が少し抜けた。

視線の元は、紀紗。

なんでコイツが、いや、まずどうして逃げてないの。

視線が物語る。


「…えっとー、帰る?」

「駄目。和泉は私と用事があるの」


初耳だけれど、こっちを見た時のぎらついた目に頷く。

一緒に帰ろうと迎えに来た由貴君を見て、紀紗は顔をしかめて「げぇ」と恐ろしく不似合いな声を発した。


「どうして"元彼"の平野君が此処にいるのかな」

「…。…えっと、」

「三十字以内で簡潔にまとめなさい」


威圧感たっぷりに微笑まれて、一歩、足が後ろにさがる。

その様子を見て、はっと鼻で笑うと今度はこちらに振り向いた。

怒っている、確実に。


「和泉、話は後。行くよ」

「…。」

「あ、いず、」

「バイバイ、平野君」


いつの間にこんなに強くなったのか。

ふわふわしていると思っていた自分に、知らない間に成長した紀紗の姿が勇ましい。

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