like or love
「なにしてんのさっ!!」
人気のない図書室に連れてこられ、誰もいないのを確認して第一声。
苛々を隠さないストレートな感情表現に思わず苦笑い。
拳を作って、握りしめている。
「また傷付くかもしれないのにっ」
「…。……でも、」
「同情?感傷?ごり押し?ふざけんなっ!!」
あーもーっ!!大声で唸る紀紗が突然携帯を取り出して、誰かに連絡を取る。
無機質に届く電子音に更に不機嫌そうに顔をしかめる。
「図書室」
―ブッ…
一言。
たった一言、相手に伝えただけで電話を切った。
新手の嫌がらせ電話かと言いたいが、それよりも紀紗の眉間の皺が怖かった。
「私、嫌だから」
「何が?」
質問にまた更に顔をしかめる。
腕を組んで仁王立ちする姿は威圧感が必要以上にあった。
「平野が和泉の彼氏になるの、嫌だから」
勢い良く鞄を掴んで、颯爽と図書室を後にする。
最後に向けられた笑みは、いつもの紀紗が見せる笑みだった。