血の果て



「キョウちゃん、お仕事行かなくて大丈夫なのかい?」


今日だけでも何度聞かれただろう。
その問に俺が小さく頷くと、老婆は嬉しそうに微笑む。


「…‥じゃあ一緒に居れるね」


と。


彼女は─────、
《母》は幸せだった。


俺の手を離さず、俺の側を離れず。

それはまるで、俺の幼児期にそうしなかった償いを、自己満足で満たすように。



< 267 / 316 >

この作品をシェア

pagetop