昼の眼鏡は夜の華

シーソー



午前授業終了のチャイムが鳴り、
図書室の戸を開けると、
珍しくも先客が居た。

加藤タケルだった。


本を探している模様。


小春は、邪魔をしないようにと、黙っていつもの特等席に座る。



『なぁ…』

『何?
UFOはタイムマシーン説は薄いと思うけど』

タケルが口を開きかけると、彼が手にとっている厚い本のタイトルを眺めながら、すかさず応える。


今日は、寝たいのだ。

昨日は休みだったが、今日は仕事が入っている。




『…そうじゃなくて、好きなんだけど』

『何が?
宇宙人?ビッグフット?つちのこ?』


小春は机に俯せになって寝る体勢。

タケルは本棚に目線をやったまま、再び口を開いた。



『花川が。』



『は?…』


『俺、花川の事、好きだわ。』

タケルが、私の事…?


特に仲が良いという関係でも無いし、
恐らく、今までの私に好かれる要素は無かったと思う。



予想外の出来事。

今日も昼寝はできそうにない。



タケルは固まっている私に、言葉を求める様に質問をした。


『好きな人、居る?』


好きな人…。

その言葉に、
優さんの顔が頭に浮かんだ。


浮かんでしまった。



『居る…かも。』



小春としての私を好きと言ってくれた

タケルの事、嫌いでは無い。


だけど、だからこそ嘘はつきたくない。



『もしかして、昨日の人?』



あぁ、もうタケルの耳にまで届いているのか。
いや、実際に優さんといるところを見ていたのかも知れない。


どちらにしても…

こういう時、何て言えば良いんだろう…



頭の中には色々な言葉が駆け巡るも、
どれもタケルに掛ける言葉では無いような気がして、喉に詰まらせる。



『…』


『お前が言いたく無いんだったら、
無理して言わなくても良いわ。

でも…俺、諦めねぇから。』

そう言うと、
タケルは図書室を出て行った。



諦めねぇ…か。

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