昼の眼鏡は夜の華
『雪ちゃん、どないしたん?
ボーッとして。』
嫌みを含んだ口調で後ろから声を掛けてきたのは、ミキだった。
『別に…何でも無いです。』
小雪は気を引きしめ、
流れるような手先でおしぼりをつくる。
『優さん、カナさん指名してはるで?』
『え…』
カナとはNo.2の先輩。
ミキの目も気にせずフロアを覗くと、
確かに楽しそうに優さんと話すカナの姿があった。
『…何、で?』
今までずっと優さんの指名をとってきたのに。
今までずっと…
『はよ取りかえさな、
カナさんに取られてしまうで?』
ミキのどこか嬉しそうな口元
今は不思議とムカつかない。
恐らく、今は怒りと言うよりも
衝撃の方が強いのだろう。
今日はフロアに出ることを止めた。