昼の眼鏡は夜の華
男性二人の接客を暫く続けていると、
着物姿の女性に手招かれる。
『雪ちゃん』
大きく盛った頭に、藤色の着物。
華奢な体だが、どこか逞しい。
『失礼します…
どうしました?ママ』
『雪ちゃんのお得意さん来はったんよ。
ヘルプ入れるん失礼かと思うて。』
ママは
先程までついていた客に目線を遣りながら、小声で話した。
『わざわざありがとうございます。
言づてだけでしたら、ボーイさん使ってくれたら宜しかったのに。』
『そんな事言わんといて。私ゃってまだまだ現役やもん。ほな頑張って』
ニコリと微笑むと、背中をポンと押してくれた。
本当に、いい人。
死んだ両親の古くからの友人といっても、
ここまで良い店で未成年の私を良くしてくれるなんて、
この人の器はどれほどまでに私を救ってくれたのだろう。