昼の眼鏡は夜の華
『お待たせしました』
私服に着替えた小雪は、
小走りで店を出た。
『行こうか。』
二人は呼び止めてあったタクシーに乗り込んだ。
『…どこ行くんですか?』
『内緒。』
予め目的地を教えてあったのか、
タクシーはどんどん進んでいく。
思えば、國崎とのアフターは初めてだ。
半年程指名してくれているが、
私は彼の事何も知らない…。
今日は彼の私情を知れるチャンスかもしれない。
そんな事を考える内に、
タクシーはぴたりと止まった。
着いたのは
入り組んだ路地裏にある、小洒落た建物。
扉の横のプレートには、
小さく「アネモネ」 と書かれていた。