昼の眼鏡は夜の華
店内は
落ち着いた装飾でまとめられていて、
ワインやら焼酎やら並んでいるところから
どうやら居酒屋らしい。
(だからお店でお酒を控えたんだ…)
二人はカウンター席に座ると、一通り酒を注文した。
お酒に手をつけたとき、
神妙そうな面持ちで國崎が口を開いた。
『君の…
本当の名前を教えてくれない?』
小雪は少し戸惑ったが、
言わなければ、半年通っていてくれた人に失礼かもしれないと思い、
教えることにした。
『…小春。です。』
『可愛い名前。』
小雪は國崎が『可愛い』という言葉を使った事に、少々驚いたが、
同時にむず痒いような嬉しさに包まれた。
…この人、いい人かもしれない。
流れに乗って、
小雪はずっと気になっていたことに踏み込んだ。
『…國崎さんは
どんなお仕事してるんですか?』
『ちょっとした自営業を。』
返ってきた言葉は、鼻にかけるでもなく、実にフランクだった。
社長…。
この若さで社長だなんて、
実力が無ければ到底無理な話だろう。
小雪は國崎に少し尊敬の念を抱いた。