その絵に。


「何、見たことない字だよ。」

マイコは首を傾げる私を見て、得意そうに答える。

「この字ね、『こい』って読むんだよ。」

「『こい』?。」

「そうだよ。恋の旧字体。」

「そうなんだ。大分、今と違って複雑なんだね。」

「そう、でね。
この旧字の意味がね、面白いんだ。」

マイコはその漢字を形成している一つ一つの文字の意味を私に教えてくれた。

「『糸』と『糸』が絡み合ったように『言』葉にならない『心』なんだって。」

「そうなんだ。」

「どう?」

「どうって、何?」

「鈍いなぁ~。」

マイコはノートを鞄にしまった。

「その字の意味あってるの?」

「う~ん…。
どうだろう。私も分かんない。
だけど、クミあいつの話してる時ね。すごく嬉しそうな顔して話してるよ。」

マジで?そんな顔してる?

「ほら、顔に出てるよ。」

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