その絵に。
毎年この時期に行われる学校行事の一つの写生大会。

全校生徒で丸一日を使って風景画を仕上げ、提出する。

それ以外は自由。

仲のいい友達数人と行動をともにする。

「クミ、行くよ。」

そうマイコに言われて一緒に学校から出てゆく。

たくさんの生徒の中から私は彼を探す。

いた。

いつも見てるからすぐ見つけた。

クラスが違うからこんなに傍に近付ける機会はないし、彼が絵を描いている姿が見れる。

そう思った私は人込みに紛れながら彼の後ろ姿を追いかける。

「ちょっと、まってよ。」

マイコが声をかけてきた。

「クミ、まじでやるの?」

「うん。私なりの方法で気持ちを伝えたい。」

「…私が言い出したことだし、仕方がないな。」

マイコには事前に話した。冗談程度に聞いていたけど私の真剣な顔を見て。

「それ、面白い。」

と一言。

ある程度歩いて、彼は友達と場所を決めたらしく、腰を下ろした。

私は彼から少し離れた場所に座った。彼の後ろ姿が見える場所。

風に揺れる草や花。
一緒に揺れるように座っている彼の後ろ姿が私の目には、そのまま風景に溶け込んでしまいそうに見えた。

彼の隣に、少しでも近づきたいけど…。

今は、まだムリ。

< 15 / 18 >

この作品をシェア

pagetop