その絵に。
太陽が傾き教室が違った顔を魅せる。
心地よかった風も少しひんやりしてきた。

「今日はここまで。」

奥に道具を片付けていた時、私は無造作にまとめてあった教材を落としてしまった。

「あ~やっちゃった。」

その教材はどこかのクラスの課題の絵だった。

床に広がった絵を拾い集め再び元の場所に戻し―。

…その中の一枚の絵。

一輪の花の絵。

鉛筆で下書きの途中であろう、その一枚を私は手に取った。

セピア色の日差しを浴びてその絵は色付く。

切なく、揺れるように描かれた一輪の花に私は少しココロが揺れた。

誰が描いたんだろう。

その絵の裏にはご丁寧に、学年、クラス、そして名前が書かれていた。

『2―3 37 松田サトシ』

分かんない。
この人が描いたのか…。どんな人なんだろう。

もう一度絵を眺めながら思った。

松田サトシか…。

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