その絵に。
気になる。
「クミ帰ろう。」

静かな美術室に響く声。

「分かった!
ごめんね。ちょっと待ってて。」

私はその絵を元の場所に戻し、慌てて片付けた。

「ごめん。帰ろ。」

友達のマイコ。
クラスは違うけどいつも一緒に帰る幼なじみ。
陸上やっていて部活が終われば私を誘いに美術室に顔を出す。

二人でたわいもない話をしながら帰る。
絵のこと以外では普通の中学生。

「マイコってさ。松田サトシって知ってる?」

「知ってるけど…
たしか、一年の時同じクラスになった、つ~か陸上部の部長だよ。」

「そうなの?知らなかった。
ねぇ、どんな感じの人?」

「う~ん…。どんなって言われても…。なんかボッ~としてるよ。」

「なにそれ。」

「あとすごい天パ。タンポポの種みたい…だから一目見たら分かるよ。」

「絶対分かんないよ~。」

って二人で笑った。

「だけど…突然、どうしたの?」

「ん。絵がね…。」

「はぁ?絵が…?どういう意味?」

「まだ内緒。」



「ただいま~。」

帰宅。それからいつもの様に犬の散歩へ出かけた。

まだ、明るさを保った時間を歩く。

このまだ夜でもない?みたいな時間が好き。
空のなんともいえない色合いが、今日1日の出来事を洗い流しているような気になる。

実は空をじっくり見るために犬の散歩をしてる―なんちゃって。

< 4 / 18 >

この作品をシェア

pagetop