DEATH MAGIC



―――――ある日、父が事故で死んだ。



飲酒運転をしていて、手元が狂ったらしい。



母は…声が枯れるまで泣いていた。


毎晩毎晩、カイに隠れて泣いていた。




母に何もしてやれないカイは、悔やんでいた。







―――――そしてある日、カイが家に帰ってくると…





「…ただいまぁ。……!!お袋っ!?」





部屋の中には、ボロボロになって倒れている母がいた。



部屋中、荒されていて、タンスの引き出しがすべて開けられていた。







「どーしてん!!何があってん!!」






母は薄っすら目を開けて、震えた手でカイの頬を触り、かすれた声を出す。






「…おかえり。…ごめんなぁ。お金、持ってかれてもーたわ…おかーちゃん、おとーちゃんは守ろう思てんけどなぁ……おとーちゃんも…守れんかってん…」





母の目から、涙が零れ落ちる。


母の手の中には、ヒビ割れた写真立てがあった。


―――父のだ。






…この母の傷は、金じゃなくて、父を守るために抵抗したものだった。
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