Slow Magic ~星が見守る愛~


「あ!!!すみません。ちょっといいですか?」



私の突然の大声に少し驚いた表情をしたおばあさんは、またこっちに向かって歩き出す。



「お腹痛むんかね?」


腰が曲がっているわりに速いスピードで私の元に来てくれたおばあさんは心配そうに私の顔を覗きこむ。


「違うんです。ちょっとお話聞きたくて…今お時間いいですか?」

おばあさんは家に上がりなさいと言ってくれたけど、きっとその家にはおばあさんの他にも住んでいる人がいそうだったので断った。


公園のベンチに座って、話し始めた。



ここにはいつから住んでいるか、ここがどんな風に変わってしまったか、おばあさんは話してくれた。


「矢野さんの所のお母さんって知ってますか?」


この質問に、おばあさんは遠い目をした。



そして3度頷いて、

「昔はよ~く話をしたよ。あそこのやんちゃ坊主も毎日のように私の家に遊びに来てたんだけどねぇ。」


隆介のことだ。


どんな子供だったのかすごく聞きたかったけど、もっと聞かなくてはいけないことがある。


「矢野さんのお母さんって今どこにいるんですか?」


私はできる限り冷静さを保ちながら、聞いた。

おばあさんはうつむいたまま首を横に振った。


「もう、随分会ってないねぇ。ゆうちゃんとこのお母さんなら知ってると思うけど、あそこも引越しちゃったからね…」


おばあさんは隆介の初恋のお姉さんの家だった場所を指差した。


「ゆうちゃんって…隆介君より少し年上の人でした?」


私が隆介の名前を口に出すと、おばあさんは懐かしそうな目をした。


「隆ちゃん知ってんのかい?ゆうちゃんは、いつも隆ちゃんと一緒にここで遊んでたよ…」


間違いなく、隆介の初恋の人だぁ。


嫉妬深い私でも嫉妬できないような、純粋な淡い恋だったんだろうな。




< 221 / 373 >

この作品をシェア

pagetop