Slow Magic ~星が見守る愛~
小学校3年生の夏、お父さんが病気で天国に行った。
今でも昨日のことのように覚えてる。
真っ白な壁。
医療器具に囲まれたお父さん。
必死でお父さんの手を握るお母さん。
まだ幼かった弟。
ピ・ピ・ピ・ピ・ピ・ピ…
心拍数を示すその機械をずっと見てた。
私は今でも後悔してる。
大きな声で呼べば良かった。
『お父さーん!!』
って。
そしたら、川を渡ろうとしてるお父さんがこっちに戻ってきたかも知れない。
どうして呼べなかったんだろ。
大事な大事なお父さんが死んじゃうかも知れないときに、
恥ずかしいなんて気持ち、捨てちゃえば良かった。
今の医療なら助かったかも知れない。
お父さんが死んじゃった時、私はこれは夢なんだって思った。
リアルな夢。
目が覚めると枕元でお父さんが笑ってくれると信じた。
「美亜、こっち座れ!」
「美亜は、俺のひざの上だろ?」
「美亜は俺のものだから…」
お父さんはいつも美亜をかわいがってくれた。
ちょっぴり偉そうなSなお父さんだった。
だからかな…
初めて会った隆介が初めて言った言葉。
「お前、こっち座れよ」
この人、好き……
一瞬で好きになったのは、お父さんの懐かしい匂いがしたから?