LAST-LIFE
タクシーに乗ってから既に数十分が経過している。

「婆ちゃん、で、どうして恐山なんかに。」
「お前を見てもらいにな。」
「誰に?」
「トメっていうイタコじゃ。幼なじみでな。」
「・・・どうしてわざわざ。」
「ま、そのうちわかる。」


沈黙が車内を長時間支配し、やがて車が止まる。

「着きましたよ。」

訛りが残った口調で言うドライバーに代金を払う。

祖母についていくとテントのようなものがあり、祖母はそこの入り口を適当にあけた。

「トメちゃん!」

祖母の視線の先には老婆がいた。
その老婆がトメらしい。

「その声はシゲちゃんかい?」

優しい声でトメが言う。

「そうだよ!」

二人の老婆は久しぶりの再会を祝う。

「で、今日ははるばるどうしたんだい?」
「うちの孫を見てもらいたくてね。」
「孫かい!どれどれ・・・。」

トメは耕助の体を触る。
『気色悪い婆さんだなぁ。』

しかし、やがて耕助は気付いた。
トメは盲目である。

「トメさん・・・目、見えないんですか?」
「そうとも。今声を聞いて初めて男だなんて気付いたよ。」

ウヒャヒャと笑いながらトメは耕助から離れて座った。
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