LAST-LIFE
戻ると香が朝食を作っていた。

「な、何してるんですか!」
「朝ご飯を。」
「わざわざそんなこと・・・。」

笑顔で言う香に、堪蔵は強く言う気も出ない。

「・・・ありがとう。」

お礼を言う他無かった。


その後、香が朝食を運んでくる。
香は自分の分も運んできた。

無言の食卓。
何となく気まずい。

「ご馳走様。」

堪蔵は食べおわると出ていく。

「か、堪蔵さん、どこへ?」
「瞑想を。」

部屋を出て、襖を閉じると堪蔵は額に手を当てて溜め息を吐いていた。

『いったいどうしよう・・・。』

以前と変わらずに、いや、更に堪蔵のことを思っていることを表現する香。

堪蔵は香のことを嫌いになったわけではない。
寧ろ、以前と変わらずに好きである。
しかし、半年のうちに香がいないことが気にならなくなり、またいなくなっても苦しみはしないだろう。

それに、欲を捨てねば来世を救うことは出来ない。

堪蔵の苦悩は瞑想でどうにかできるレベルではなくなりつつある。
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