LAST-LIFE

現代:勘蔵

「…すけ!‥うすけ!耕助!耕助!」

誰かが自分の名前・・・
いや、この体の名前を呼ぶ。

《自分は死ぬのだろう。
自分で願ったのだから仕方ないことだ。
本来のこの体の主は自分の体でうまくやっていくだろう。
自分の命と引き替えでも救えてよかった。》

勘蔵の魂は死への覚悟を決めていた。
死は恐くなかった。

突然、耕助の記憶が走馬灯のように蘇った。

そして最後の記憶・・・。

「死ぬなよ。」

老婆の言葉が胸で響いた。

心の奥底から強い力がわいてきた。
生きることを体が欲した。

目を覚ますと家族全員がベッドの周りにいた。

生きることを自分よりも周りが欲していたのだと気付いた。

自分が入れ替わる必要はなかったのかもしれない。
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