LAST-LIFE
侵食される自我

数ヵ月後の互い

「実は最近、ときどき自分が本当は勘蔵であることを忘れるんです。」

勘蔵は祖母に相談した。

耕助としての生活に慣れてきたからだろうか。
勘蔵という自我を忘れかけている。

「忘れるか・・・。」
「・・・。」

勘蔵は静かに頷いた。

「おそらく・・・耕助になりつつあるということじゃな。」
「え!?」
「耕助としての生活を続けたせいで、勘蔵としての自我が薄くなってきたのじゃろう。」
「・・・。」
「以前の習慣を顧みれてみればよいのかもしれぬな。」
「以前・・・。」

目蓋を閉じて考えるが、何も思い出せない。

思い出せるのは自分が以前、勘蔵という人間だったことだけ。

勘蔵は自我の危機をはっきりと感じた。
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