LAST-LIFE
帰宅すると、祖母がリビングでお茶を飲んでいた。

「ただいま。」
「おかえり。」

耕助が部屋に戻ろうとすると、祖母に呼ばれた。

「まぁ、座りなさい。」

「なに?」


「お前、自分が以前、勘蔵だったことを憶えているか?」


空気が凍り付く。
耕助の脳は激しく回る。

「意味、わかんないよ。」

それ以外、口からでなかった。
脳の稼働に関わらず、思考は進まなかった。

「憶えていない・・・か。・・・わかった。戻っていい。」


耕助は自室に戻り、ベッドに転がった。

「俺が勘蔵・・・?」

目を瞑った。

時計の秒針の音だけが響く。

―――!

一瞬、真っ暗なはずの視界が真っ白く光った。

同時に心搏が激しくなる。

不思議な体験をしたと思った。

いやな汗をかいた気がした。

一度、深呼吸をして立ち上がった。
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