LAST-LIFE
「項宥様・・・。」
「田所か。・・・どうした?」
「総鶴様には・・・器がおありでしょうか?」
暗い声で聞いた田所を床に寝たままの項宥は鼻で笑った。
「私がこのまま息絶えると申すか・・・。まぁ、それもいいだろう。」
自嘲気味な意志すら感じる口調。
さらに続ける。
「総鶴か・・・。頭脳も武才も兄弟で一番だ。それなりの政をするだろう。」
生唾を飲み込む田所。
「だが、あいつへの民の尊敬は勘蔵には及ばない。」
「それはどのような・・・?」
「言ったままの意味だ。・・・私は兄弟で一人、何の才も持たずに生まれてきた。その私が帝になるとは、不条理なものだな。」
力の無い笑い声をあげる項宥。
やがて表情は消える。
「田所、私は疲れてしまった。下がれ。」
「はっ。」
田所が去った後、項宥の頬を涙が伝っていたのは項宥本人だけの秘密である。