LAST-LIFE
「はよ乗れ。」

耕助が着替えて茶の間へ行くと祖母に急かされた。

家の前にはタクシーが来ていた。
祖母は耕助より先に乗る。
耕助はワケもわからずに乗る。

「新千歳空港。」

『え、いきなり空港っすか?』


二時間後・・・

「急げ耕助。」

速歩きの祖母。

『ホントに70過ぎてんのかよ?』

祖母の速さは耕助に動揺を与えるには十分だった。

二十分後・・・

飛行機に搭乗完了した祖母は安堵の表情を浮かべた。

「なんとか間に合ったな。」
「で、どこに行くんだよ?」

しかし、少し苛立ちを含んだ耕助の問いは祖母の眠気に適わなかった。
祖母は既に眠っていたのである。

『なんつー年寄りだよ。』


気付けば飛行機は青森に到着していた。

祖母は荷物を取り、タクシーに乗った。

「恐山。」

耕助の背中がゾクリとした。
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