自由連鎖
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騒がしい都会から孤立した、ある静かな川原で、一人の青年が寝転んでいた。
青年の横には紺のスクールバッグ。その中からはコンビニのものと思われる、不透明なビニール袋が顔を出していた。
青年は顔に乗せていた何かのパンフレットを持ち上げ、朱色に染まった夕焼けを覗いた。
風でかさかさと音を立てるページ。その表紙には、「東京大学案内」の文字。
有名大学のパンフレット。そこには、楽しそうに笑う大学生と、立派な本館が載っていた。
ふいに、青年はため息を吐いた。
そして、「こんなものどうでもいい」と言うように何の惜し気もなくそれを丸めると、近くにあったクズカゴへと投げ捨てた。
だが、溢れかえるペットボトルがそれを拒み、草地へと投げ出されることとなった。
しかし、青年はそれを気にとめる様子もなく、スクールバッグを肩に掛け、川原を後にしようと歩きだした。
「真也兄ちゃんもう帰るの?また遊んでね」
真也兄ちゃん―そう呼ばれた真也は、幼い声に尋ねられ、ゆっくりと振り向いた。
「あ、あぁ。じゃぁ―…またな」
内心、遊んでいたことを忘れて寝ていた真也は、曖昧な笑みを浮かべると、泥団子でも作っていたのか泥だらけの手を振る子供に、軽く手を振った。
家路につき、思い出したようにケータイを見ると、シンプルな待ち受けには「メール3通」の表示。
真也は胡散臭そうにメールのマークを押した。
すると、すぐに受信箱内に移り、未読メールが画面に飛んできた。