COLORS【白】W ─ダブル─
想い
 いつも歩いている通りがこんなに長く感じたのは初めてだ。
走っても走ってもなかなかゴールが見えない。

どうしてあんなこと言うの?

穂稀のこと好きなのは桜で、私とはただの幼なじみ。
これでいいじゃない。
私はあんたのこと好きだなんて気持ちはこれっぽっちも、

これっぽっちも……、

無いんだから――。




「桃ぉ~!!」

「……桜!」

彼女の声がとても弾んでいて良いことがあったこと連想させる。
昔から桜は嬉しいことがあるとこうなんだ。

「おめでとう!佳作だって!!」

「……私が?夢じゃないよね?」

「現実!!頑張ったね~!!偉い偉い!!」

「本当!!やったぁ~!!入賞だぁ~!!」

自分のことで両手を上げて喜ぶのは何年ぶりだろう。
何にせよ、佳作でも賞の取れなかった私にしてはとても嬉しかった。

「そうだ……桜は?」

「もちろん!!」

彼女はにっこりと微笑んでVサインをして見せた。

「最優秀賞?」

「うんっ」

「わぁ~い!!やったぁ!!桜~!!これで念願のパリに行けるね!」

「……そうね」

「どうしたの?嬉しくないの?」

「ううん、メチャメチャ嬉しいわよ。でもみんなとお別れしなきゃならないのが辛いよ」

「三ヶ月なんてあっという間だよ!!桜はやっと自分の夢に向かって一歩踏み出せたんだから!胸を張っていなきゃ!!」

「……桜」

「離れていてもずっと一緒だよ」

これまでも……そしてこれからも。

小さい頃から桜の泣き顔を見るのがイヤだった。
彼女にはずっとずっと笑っていてほしい。

私は桜のこと裏切ったりしないから……、
安心して。
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