眩しい君
「…………結婚、したのか?」
「え?」
「いや、子供居るし」
女の子をちらっと見る。
「………うん。でも、もう駄目かも」
はは、と無理に笑う絢乃。
「……何か、あったのか?」
「………大、丈夫、だからっ……」
言葉とは裏腹に、絢乃はぽろぽろと涙を流す。
俺は放ってはおけず、「とりあえず、話でも聞くから」と働き先の喫茶店へ連れて行こうと絢乃の腕を掴んだ。
絢乃はまだ「大丈夫」や「私の事は気にしないで」と言っていたが、俺はそれを無視して絢乃とその子供をエレベーターに乗せた。
「……この子、何才なの?」
「………四才。はるって名前なの」
少しどきっとしてしまった。
俺と、同じ名前だったから。
はるは、俺をじっと見上げていた。何も言わず。
ひろさんに事情を話すと、ひろさんは「少しの時間俺とバイトで店はやっとくから。お前はその子の傍に居てやれ」と言ってくれた。
俺はその言葉に甘えて、休憩室のソファーに絢乃とはるを座らせた。
「コーヒーで良い?」
「…うん」
「……はるは、オレンジジュース?」
俺がはるを見ると、はるはゆっくり頷いた。
コーヒーを入れてオレンジジュースをグラスに注ぎ、それらを二人の前に出した。
絢乃は落ち着いたらしく、泣き腫らした目をそのままに「ありがとう」とコーヒーを一口飲んだ。
はるはグラスを持ってストローを吸い上げながらオレンジジュースを飲んだ。
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