Last Wing
ただ、ずっと籠の中にいたあたしはこの気持ちの呼び名を知らない。
そう思うと、同時にね、悔しくなるのよ
外の世界にいた祐樹は、この呼び名を知っていて、もしかしたら誰かに抱いてるのかもしれない。
それが、悔しくて、寂しくて。
悲しいの。
「美音、また楽譜借りたのか?」
あたしの腕の中にある何冊もの楽譜を祐樹はまじまじと見つめた。
少しずつ、少しずつだけれど“音”を受け入れられるようになった。
それも、祐樹のお陰だね。
「ちゃんと、笑えてる。」
くしゃり、と頭を撫でられて、また1つ心拍数が跳ね上がった。