Last Wing
中庭に連れてかれても尚、一言も話さない瀬那。
「おい、瀬……」
「俺はね、美音の為だったら何でもできるよ」
背中を向けたまま話し出す瀬那。だから表情は見えない。
「あの人がいなくなってしまったあの日から俺は、精一杯あの人の代わりを務めようとしてきたよ」
あの人?
「美音の笑ってる時も泣いてる時も怒ってる時も寄り添い続けてきたんだ。美音に迫りくる困難から守り続けてきたつもりだよ」
そこで瀬那は言葉を切り、深呼吸した。
「……だから、美音が望むことなら何でもしてやりたい、だけど」
くるり、とこっちに振り返る。