Last Wing
「……嫌いだよ、お前なんか」
少し涙を浮かべた目を擦り、瀬那がしゃがんだ。
「俺は……ひとつしか教えない」
「え?」
「あとは……美音自身に聞け。美音の苦しみ全てを分かっていない俺が話していいようなことじゃない。」
強い表情の瀬那を見据え、こくりと頷いた。
「わかった」
瀬那は赤く染まり始めた空を仰いで、誰かの名前を呼んだ。
「サヤカ姉も……きっとお前に聞いて欲しいと思ってると思う。不本意だけど」
美音溺愛のあの人の事だから、と優しく笑う瀬那に少しばかり羨ましく思った。
「……美音は――」