Last Wing
美音の小さな手が俺の顔を包む。
「みの…っ」
《あたしも》
「え…?」
聞こえないはずなのに、心に直接響く美音の声。
《祐樹の隣で、色んな世界を見たい。今まで、見れなかった分を全部。そして、何より……貴方の笑顔をずっとずっと見ていたい》
最後に濡れた瞳を細め笑う美音の頬に美音のものではない、雫が落ちる。
《…泣かないで、祐樹》
おでこを俺のおでこに、くっつけて間近で見つめ合う。
美音の瞳には涙でぐしゃぐしゃな俺の姿。
《大好きよ、祐樹》
自然に引き寄せられる唇に身を任せて、抱き締め合う。
涙の味の、キスだった。