Last Wing



空っぽの部屋には、もはや美音の気配さえ感じられなかった。

「ゆ…きくっ…」


追い掛けてきた先生には目もくれず、ただずっと部屋を見ていた。

なんで。なんで。
疑問ばかりが浮かんでは消えていく。

「……美音は」

「祐樹くん…」

「美音に会いに行くから、場所教えてよ」



振り返らず、背後の先生に言うと息を止める音が聞こえた。



「……ごめんね…っ、言えないわ。美音ちゃんと約束したの…っ」


俺はいつから美音に拒まれる存在になったんだ。


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