Last Wing
色々なことが起こって、
色々な人のお陰で今この舞台に立てる。
それが、どんなに幸せなことか。
「美音ー、お花が届いてるわよ」
「花?」
お母さんの声のする方へ向かい、広がる光景に笑った。
本当に、あの二人は仲が良いんだか悪いんだか。
「胡蝶蘭に…なんて花?」
「名無しの花」
「なあに?それ」
アガパンサス、という名前の花だとこの前…誰だっけ?…あ、楽団の人が教えてくれた。
だけど、たとえ名前が分かったとしても、あたしと祐樹の間では“名無しの花”だ。
「あら、あと…」
「え?」
どちらが大きいか競うかのように並ぶ二つの花の向こうに
「……嘘」
一輪のバラがあった。
窓も開けてないのに、廊下に暖かい風が吹く。
“頑張って、美音”
「お母さん、このバラ頭にさせる?」
「え?…あ、可愛いわね!」
お姉ちゃん、一緒に歌って。
「笠置さん、そろそろ袖に…」
「はい、今行きます」