続きはご想像におまかせします
ビクン――。
あたしの体が大きく動いた。
『幸せになる方法』
母が捨てたはずのあの本が、
なぜかあたしの机の上に置いてある。
あたしは見た。
母が、今日、あの本の塊を捨てに行くのを。
その中に『幸せになる方法』があったのは確か。
絶対。ハッキリ。この目で見た!
なのになんで……。
でも信じられなくて……
「お母さん! あのピンクの本知らない?」
自分の部屋からリビングまで、
精一杯に大きな声で聞いた。
「あ、ごめん!
捨てちゃったよ! まずかったぁ?」
やっぱり……。
「や、全然……!
へ……いき!」
自分でも、
『苦笑い』になっているのがわかる。
息が上がっていくのがわかる。
視界が開けていくのがわかる。
『幸せになる方法』
「何これ!」
あたしはその本をかばんに突っ込んだ。
「知らなくちゃ……知らなくちゃ……!」
意味不明な衝動。
でも、確かな衝動。
何も知らないままじゃいけない。
この本をこのままにはしておけない。
藤野に聞かなくちゃいけない。
藤野和人……あいつ、普通じゃない!
あたしはまた家を飛び出した。