続きはご想像におまかせします


「絵里っ?」

自転車を必死に走らせていると、
途中で明美に会った。

彼女の手には、『幸せになる方法』。


あたしは自転車から下りて、
明美からそれを奪い取った。

「きゃっ! な、何?」

明美は目をパチパチさせた。

「こ……この本、どうしたの?」

あたしは彼女の『幸せになる方法』を奪い取った。

「え……こないだの事件のお詫びにって、
藤野からもらった……」

「『藤野』っ?

『事件』っ?

ちょ、ちょっと、詳しく話して!

お願い!」

「ここで?」

「ここで!」

「どうしたのよ……?」

「いいから! お願いします!」

「……事件のことは、口外禁止だから、何も言えないよ。

ごめん、深刻な感じのとこ、悪いんだけど。

……。

……って、っていうかさ、
この本、書いてあること嘘ばっかで。

いらないから今……」

「『嘘ばっか』っ?」

「そ、そう……。書いてあるとおりにいろいろ頑張ったって、
全然幸せになんかなれないの。

ウ、ウケんでしょ?」

「やっぱり……そうなんだよね。

そ……そうなんだよね。」

あたしは確認するようにしてから明美に本を返すと、
全速力で自転車を走らせた。

「ちょ、ちょっと!」

明美がそう叫んでたけど、
結果的にシカトしてしまった。

ごめんなさい。
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