続きはご想像におまかせします
あたしは石垣絵里と話がしたくなった。

だから、タイミングよくトイレから出て、
彼女の目の前に立った。

「あ……安藤さん?

どうしたの?」

彼女は目をクリッとさせた。

……絶対演技。

「藤野のこと、フッたんだ。」

「あ……聞こえちゃった?

そっか。安藤さん、
藤野の大ファンだったよね。」

「『聞こえちゃった』っていうより、
『聞いてた』。」

「……。」

石垣絵里は急に後ろを向いた。

多分、泣いてるんだろうと思う。

「かっこよかったよ。

ほとんどの人は藤野に好かれたくてしょうがないのに、
石垣さんは違うじゃん。

なんかしんが強いっていうかさ。

だから藤野も惚れるんじゃない?」

沈黙。

でも、しばらくすると石垣絵里は目を腫らしてあたしとまた向き合った。

「……意味わかんない。

ってか、安藤さんってそういうこと言う人だったっけ?」

「さぁね。

いつも言いたいことそのまま言ってるだけだから、
キャラとかそんなのは全然ないよ。」

「……憧れる。

そういうの。

あたし、周りの目気にしすぎだから、
いつもいつもつまんなくて。

こういう時ぐらいだよ。

ちゃんと言いたいこと言えるの。」

「ま、あたしみたいに人に気使えないのも問題かもしんないけど、
そればっかで何もしないのも……」

「じ、じゃぁね。

あたし忙しいから。」

「あ、うん。」

……? 何だよ?

人の言葉遮りやがって。


あたしは走っていく石垣絵里の背中をギッと睨んだ。
< 183 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop