続きはご想像におまかせします
「雪、降らせてくれない?」

「『雪』?

あぁ、いいよ。

けどこの地区だけな。

全国とかにすると気象予報士の人達に悪いから。」

「了解。」

なんともすんなり。

少し驚いた。

だって、やっぱり完璧には信じられてないから。

「少しの間後ろ向いててくれるか?」

「うん。」

あたしは藤野の指示どおりに壁と向かい合った。


……。

「いいよ、こっち向いて。」

早いな。

多分十秒も経ってないんじゃない?


あたしは体を百八十度回転させて、
再び藤野と向き合った。

「外見てみ。」

藤野は部屋の窓を開けてくれた。

「わぁ。」

あたしは思わず感動の声を出した。

今まであたしを縛り付けていた何かがフッと突然消えた気がした。


映画に出て来るような、
神秘的な光景。

雪がここまで美しく見えたのは、
きっと生まれて初めてだ。

「な? 嘘じゃないだろ?」

手を頭の後ろに回して自慢げに言う藤野。

……よかった。いつもの藤野だ。

「すごいよ、すごい!」

これしか言う言葉が無かった。

少しでも信じててよかった。

藤野のファンでよかった。

「なぁ、おまえさ、
なんで『俺が宇宙人』だって信じてくんなかったわけ?」

藤野が本当に不思議そうな顔をして聞いてきた。

「信じたくても心に拒否されてたって感じで。

でも、今なら信じられる。」

あたしは雪を眺めながら言った。
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