続きはご想像におまかせします
「もしもしっ?」

その声を出した時はすでに俺は部屋にいた。

どんだけのスピードで走ったんだろう。

『龍一……』

電話の向こうの彼は、
震えた声を出した。

「どしたっ?」

俺はなんだか嫌な予感がした。

『助けてくれ……!』

「『助け』っ?」

俺の心臓がドックンと、
大きく鳴った。

鼓動はどんどん高まっていく。

『あぁ! 助けてくれ!』

「どういうことだよ? どこ行けばいい?」

『花中の東門! 頼む!』

「『花中の東門』だな? わかった。すぐ行く。」

俺は電話を切ることも忘れて、
手ブラで家を飛び出した。

外はもう暗かった。

チャリに乗る時間ももったいねぇ。

こういう時は自分の足を頼りにすんだよ!


俺は必死で走った。

自分でも俊足なんじゃないかと思う。

動きづらいはずの制服も、
今はジャージ以上に運動向きなような気がしてきた。


信号無視あたりまえ。

ランニング中のおっさんにぶつかるのも余裕。

……ダッシュだ、ダッシュ!


三分も経たないうちについた。

いや、十秒以内だったような気さえする。

「カズゥ……カズゥ!」

俺は東門の前で叫んだ。


すると、

「龍一!」

後ろから誰かが俺を呼んだ。

女だ。

「……明美っ?」

俺は目が飛び出るかと思った。
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