続きはご想像におまかせします


家に帰ると、
妹が待っていた。

「明美先輩から。

ケータイ取られちゃったから手紙だって。」

妹は俺に水色の封筒を渡した。

「部屋でゆっくり読んでくれば?」

「……。」

俺は無言でそれを受け取り、
無表情で階段を駆け上がった。


封筒を開けると……
『チャリン』……十円玉が飛び出してきた。

そして、一枚の便箋。

小学生みたいな字を、
俺は目で追っていた。

『ケータイ壊れたから手紙。ゆるして。


十円はこないだのバカメールのじゅしんりょう。

うけとってください。


リュウイチ、守ってくれてありがとう。

すごい嬉しかったし、
なんかホッとしてる。

ウチら、付き合ってていいんだよね?

っていうか、付き合っててください!

おねがい。』

短っ!

ってか、『受信料』書けなくて『嬉しい』は書けるのか。

「フッ」

俺は思わず笑っちまった。


『付き合ってて』……もちろんオケーだっつの。


俺は明美からの十円玉を弾いて上に投げた。

『チャリン』……いい音をたてて、
それは俺の机の上に。

「平等院鳳凰堂。」

中一の時に習った言葉を、
なんとなくつぶやいてみた。
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