続きはご想像におまかせします


「ただいま。」

あたしが帰って来ても、
誰も気付いてくれなかった。

もう慣れたけどさ。

「クロール五十メートルで自己最高記録だしたよ。」

「すごいなぁ。

おまえにならいくらでも好きな水着買ってやるよ。」

「じゃ、明日買いに行く!」

「おぉ。」

……。


聞きたくないんだ。

家族の会話って。

水泳の話ばっかだから。

「ただいま。」

あたしは水泳の会話を楽しんでる父と弟の間を遮るように言った。

「……おかえんなさい。」

父がため息混じりに言った。

「……。」

あたしは二人を睨み付けた後、
静かに自分の部屋へ向かった。

「なんで? なんで、なんでっ?」

一日何回泣いてるんだろう。

あたし、いつも部屋で涙流してる。
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