最後尾の車両で盗み聞き
盗み聞き
俺は今、名前も聞いたことがないわけのわからん祭りの取材に行ってきた帰りだ。

俺は新聞記者として犯してはならないタブーをいくつも犯してきた。

いわゆる政治家によってインペイされた事件を掘り返して告発する。

それが俺のしてきたことだ。同業者にはひともく置かれる存在だったが、上司からは

とことん嫌われ、枝豆祭りなんて聞いたこともない祭りが開かれている四国の村に

飛ばされてしまった。最初は腹が立っていたが、今はとにかく疲れている。

終点の東京までまだ2時間半もかかるし、少し寝るか。

この最後尾の車両はかなり人が少ない。俺を含め9人しかいない。

新聞を読んでいるサラリーマンと、ケータイをいじりっぱなしの金髪のガキ、

べちゃくちゃ喋っている若いサラリーマンが2人、露出度の高い服を着た女、

喪服を着たおばあちゃん、そして俺のとなりに座っているさえない大学生2人。

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