SCU─始まりの章─

──カチャッ

ガラガラガラ


健太郎が鍵を開けると、卯月と名乗る男はすぐに窓を開けた。


「どーも。」


ちっとも感謝の気持ちが込もってない言葉を発しながら、卯月は足をレールにかける。


「(ドキドキ・・・こいつ、何する気だ・・・)」


緊張する健太郎をよそに、卯月は健太郎に手を伸ばす。


ガシッッ


「・・へ?」


気付いた時にはもう遅かった。


「と、と、飛んでるううぅぅぅ!!!!!」

「うるさい!静かにしろ!」


卯月は健太郎の襟元をつかみ、空高く飛んでいる。


「ははは・・飛んでる・・・」
「?」

「あっはぁ〜
飛んでるぅ〜
ここは〜お空〜
あれは〜ビルかな〜
わあ〜まるでアリンコみたいだぁ〜」

「こいつ・・壊れやがった・・」

「ハハハハハハハハハハ・・・・」


あまりの驚きと恐怖でおかしくなってしまった健太郎を抱え、卯月は
“ある地点”
を目指し、遠くへ遠くへと飛んでいく。

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