図書室のラブレター
「だから、名前はぁ?」
横で花井君が
『答えなくていいから』って
ボソッと呟く。
よっぽどあの人のことが
嫌いみたいだ。
「…仲原ですけど」
「じゃなくて、下の名前!!」
「蓮実…」
「ふーん、蓮実かぁ」
訳が分からなかった。
まさかこんな不良に
名前を聞かれるなんて
もっと想定外だ。
「蓮実、
今度デートしような」
明るく笑顔で言った彼は
そのまま立ち去っていた。
その笑顔は少年のように
キラキラとしていた。
意外だったけど、少しだけ
いい人かもって思えた。
(怖いはずなのに…ね)
でも横から不穏な
雰囲気が漂ってきて
見向きできなかった。