蜂蜜男子の誘惑~右にバニラ 左にチョコ~
 しかも聞いていれば、『好き』とかじゃなくて、ミーハーじゃないからって理由。それになにより。

(右京先輩、左京先輩のことしか考えてない)

 そんなのってない。

「っ……あ、あたし……」

 急に先輩たちの顔を見れなくなる。あるわけないと思ってたけど、期待しないわけがない。急に呼び止められて名前呼ばれちゃったら……誰だって期待するよ。

(……バカみたい)

 ないないと思っていても期待して。舞い上がって。あげく好きな人に違う人を紹介されて。しかも理由が『防犯』って。

(まさか、からかわれてる?)

「あの、あたしはっ」

 右京先輩が好きなんだから、左京先輩とはつきあえないっ。

「由依ちゃんが左京と付き合ってくれたら、ボクも嬉しいんだけどな。 由依ちゃんと会える時間が増えるし」

『会えると嬉しい』

 そう聞こえて、ふと顔を上げる。

「……え? あの……それは、どういう」

「他意はないよ。 そのままの意味。 ボクは由依ちゃんのこと好きだし」

「っ……!!」

(す、好きぃ!?)

 落ちていたテンションが一気にあがる。

 そして瞳は右京先輩のキラキラスマイルに釘付け。

 優しく柔らかに愛おしく相手を見つめる甘い微笑み。

「だから由依ちゃん、付き合ってくれるかな? 左京と」

 とびっきり甘い笑顔と声。




「はい!!!!! 喜んでッッ」




 迷うこともなく即答。


 ……。


 …………。




(あれ? いまあたし……)

 気づいたときは、時すでに遅し。
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