蜂蜜男子の誘惑~右にバニラ 左にチョコ~

「あーあの、ご兄弟なんですか?」

「右京くん、話すのはまずそこからみたいです」

「そのようだね」

 右京先輩はそう言ってフフフと笑い、左京先輩の隣に立った。

「改めまして。 由依ちゃん、弟の柚木右京です」

「へっ!?」

(弟ッッ!?!?)

「そしてこちらが……――」

 ほらっと背中を押され、左京さんは1歩前へ出る。

「初めまして。 右京の双子の兄の左京です、よろしくお願いします」

 ふ……

「双子ーーッッ!!!!!! 嘘ぉぉぉ!?」

「ッ!?」「わお」

 自分でもビックリするくらいの声が出た。

 いやでもまだ、この驚きを表現するには足りないくらいのボリューム。

 信じられないというか、これはもうドッキリで、どこかにカメラがあるんじゃないかと思っちゃうくらい。

 実際、右京先輩は芸能界の人だし。

 ありえないことはない。

 ぐるぐる考えていると、驚きの表情(といっても口しか見えない)を崩さない左京先輩とは逆に、右京先輩はニコニコ微笑んでいた。

「ふふふ。 大きな声♪ これは今までで一番素直で良い反応だね、左京」

「は、はははは。 そうですね、右京くん」

 やっと開いた口が塞がった左京先輩が右京先輩の1歩後ろへ戻る。

「ふ、双子ってっ!? 同時にそっくりで産まれてくる、あの双子ですか!?」

 改めて、先輩たちを見比べる。

 もうそれはキョロキョロジロジロと高速に何度も何度も。

「ま、まあそうですね」

「違うでしょ、左京。 由依ちゃん、いい? 双子でも一緒に取り出されることはないよ。 どっちかが先だし、一卵性双生児じゃない限りそっくりなんてことないよ。 ボクらの場合は左京が先だったから、左京がお兄ちゃんなの、わかる?」

「あ、はい。 すみません」

(……ってことは先輩たちはイチランセイってのじゃないってことか)

 そのほうが納得できる。左京先輩は右京先輩と似てない。

(そりゃまあちゃんと見えるのは口だけだけど?)

 それでも絶対似てない言い切れてしまう。姿、形、雰囲気からしてみても、似ているのはシルエットだけ。
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