蜂蜜男子の誘惑~右にバニラ 左にチョコ~
「…………え?」

 右京先輩は体勢を正すと、左京先輩の隣に戻り、左京先輩の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「フフフ、この手触り……やっぱり左京の髪が一番気持ちいい」

「右京くん、人前ですよ」

「んー……いいじゃない、ほら……整えてあげるから」

(……と、突然すぎる、右京先輩。 でもカッコイイ……)

 いつもみたいなキラキラ笑顔ではなく、くしゃっと何も気にせず笑っている。そして左京先輩の髪を両手で整えて、子どもみたいにはしゃいで……。

(違う一面、見ちゃった!)

 そう得した気分も最初のうちだけ。

(っていうか、なんでいきなり髪触るの?)

 だんだんカップルがイチャイチャしているような感じに見えてきて、イライラしてくる。

(いつ終わるんだろう……ちょっと疲れた。 でも、話しかけられない)

 いくら大好きな右京先輩でも、無視されれば……ちょっと……うん、ちょっとだけムカつく。左京先輩なんてされるがままで、もっとムカつく。

(はぁぁぁ。 まあ、もう少し昼休みの時間はあるし、落ち着くまで待とう)

 話しかけられない自分にも非はあるだろうとグっとこらえる。

 

 ――そして待つこと10分。
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